今日は本ブログの記事中にもしばしば登場する
マッドチェスターについて触れておきたい。
ザ・スミスという規格外の例外を除けば,
ハイティーンの僕を最も熱狂させたムーヴメントが
マッドチェスターだった。
70年代後半,ジョイ・ディヴィジョンと
ファクトリー・レコードによって
盛り上がりを見せ始めたマンチェスターは,
そのファクトリー・レコードと今や伝説と化した
ハシエンダを中心として
80年代UKダンス・シーンの一大拠点へと発展する。
イアン・カーティスの自殺によるジョイ・ディヴィジョンの
終焉という衝撃的な事件の後,
新たにファクトリー・レコードの看板となったニュー・オーダーや
ザ・ドゥルッティ・コラム等がシーンを盛り上げる中,
ダンサブルなサウンドとハシエンダに集う若者たちの
ドラッグ・カルチャーは次第に独自の融合を見せ始め,
それまでには見られなかった新たなロック・スタイルが
台頭することになる。
それは,アーティストと観衆の間の垣根を取り払おうする
オーディエンス主体のスタイルであり,
それまでのシーンにはなかったよりオープンで
享楽主義的なスタイルだった。
サウンド的には伝統的なロックのフォーマットに
4つ打ち主体のハウス・ミュージックのエッセンスが取り込まれ,
その役割も次第に「聴かせる」から
「如何にフロアを機能させるか?」にシフトしていく中,
こうした動きに「止めの一撃」を加えたのが
ザ・ストーン・ローゼズだった。
ロック史上最強のリズム隊,レニ&マニの強烈なグルーヴと,
縦横無尽に駆け巡るジョン・スクワイアの
サイケデリックなギターが生み出すこの上ない疾走感は,
90年代のロック・ミュージック,ダンス・ミュージックが
真にあるべき姿を示して見せた。
彼らの登場によって「マッドチェスター・ムーヴメント」は
90年代初頭のロック・シーンを席巻する
一大ムーヴメントへと拡大していく。
拡大するムーヴメントの中にあって
あからさまなローゼズ・フォロワーも数多く見られたものの,
大御所ニュー・オーダーをはじめ,ハッピー・マンデーズ,
808ステイト,シャーラタンズなど,
ユニークなバンドが多くの優れた楽曲を残している。
長期のブランクおよび過度の期待ゆえか,
優れたサウンド・デザインであったにも関わらずセールス的には
惨敗を喫したザ・ストーン・ローゼズの
2nd アルバム Second Coming のリリースを境に
マッドチェスター・ムーヴメントは失速。
既に台頭しつつあったブリットポップ・ムーヴメントが
その後のUKロック・シーンを盛り上げていくわけだが,
マッドチェスター・ムーヴメントがその後の
UKロック・シーンに与えた影響の大きさは計り知れない。
世界を席巻したこのムーヴメントがなければ,
ザ・ストーン・ローゼズがいなければ,
あのオアシスもレディオヘッドも
存在しなかったかもしれないのだから。
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